日記


・朝晩の寒暖の差が激しくなってきた。庭に出している観葉植物を取り込まなければならない。荻窪に住んでいたころはちょうど勤労感謝の日あたりに取り込めばよかったのだが、八王子では文化の日を過ぎると少し怪しくなってくるので、そろそろ準備を始める。荻窪と八王子の温度差は、約三週間である。だいたい目安として最低気温が4℃以下になってしまうと、耐えきれなくて枯れてしまうものが出てくるので、少し余裕をもって取り込むわけである。現在の八王子の最低気温は7℃とか9℃とか。取り込むには悪くないだろう。



・鎌倉の絵画教室を指導しに行く前に、藤沢駅ファーストキッチンでコーヒーを飲みながら1時間半くらい書物を繙く。仕事に行く前に書物に集中すると、あまり仕事自体のことをごちゃごちゃと考えずにしかし頭を目覚めさせることができる。そして仕事へ程よくクリアな気分で臨めるわけだから、この時間は重宝するのである。また、藤沢駅には、林屋という有名なキッチン用品の専門店があるので、たまに其処へもふらっと入ってみる。なるほど有名ブランドのキッチン用品が並んでおり普段はなかなか手が出ないものばかりなのだが、年に2回ほどセールをやっている。今回の目玉商品は、「ハリオ ティーポット ドナウN」だった。定価が8000円もするやつが83%引きなので、これは即買いした。普段一人暮らしにも関わらず毎日大量にハーブティーをつくり飲む習性があるので、大きさも丁度よい。家に帰ってハーブティーを淹れてみるとさすがに見た目もよく、持ち運びもとてもよく、品があり入った茶もうまい。なんだか繊細なつくりなのでうっかり割りそうで怖いのだが最初から我家や手に非常になじむので、意外にも割れることなく長く深い付き合いになりそうだなと思う。
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・鎌倉の絵画教室と云えば、今年も無事に展覧会を開催することができた。4日間で約330人もの来場者数だったそうである。サークルのメンバーは高齢の方が多く、本人の体調や伴侶などのお世話等々、様々な事情で続けるのが難しくなってきた方々もおられるわけで、サークル自体も何時まで続けられるかは正直判らないくらいであるのだが、絵画自体は非常に力のある伸び伸びとした作品ばかりで、去年より3人も出品者が減ったとは思えない出来であった。
展示をし終えた後、いつもの中華屋でご馳走になる。其処の中華屋の「レディースセット」は、その名称にも関わらずボリュームもあり品数も多くいちばんお得な気がするので、毎年それを頼む。



・展示を後にし、予てより友人に「是非ここを観るとよい」と勧められていた覚園寺に行くことにする。鶴岡八幡宮を横目に通り過ぎ、中学校やらある道をてくてくと歩き、鎌倉宮を通り過ぎ更に奥の道を行くと漸くみえてくるのがこの寺である。

友人の情報以外ほとんど調べもせずに辿り着いたのだが、一見、大きな建物も見えず、緑豊かな中にお堂がひとつあるだけなのかなと思った矢先、ここから入場料を取るという旨を書いた小屋を発見した。しかしながら閉門しており受付には誰も居ない。よくみると1時間に一回凡そ50分程度の説明を受けながらお堂を回る小ツアーがあるらしい。ただ、その小ツアーは、15時が最終であるらしく、思わず自分の時計をみると15時15分。あーこりゃしまったな、と思っていると、愛染堂の横あたりから電話しながら人が出てきた。ああこの寺の人だなと思い電話を終わるのを待つ。暫くして電話を終えたその人は「ああさっき行っちゃったばかりなんだけどね、まだ追いかければ十分追いつくから、入る?」と云うので、ほんとうに追いつくんですかと訊くと「追いつくよ、今其処まで案内するから」という。ほんとうにあっけないほどすぐに追いついたのだが、ちょうどメインの薬師堂を案内している所であった。運が良かった。

薬師堂に入ったとたん、大仏が鎮座しており、それが薬師如来。手前に小さい開山の智海心慧上人像。向かって右が日光菩薩、左は月光菩薩。そしてお賓頭盧様。左右には十二神将像。この十二神将は普通の寺の形式ではご本尊などに比較して小さく創られるものだが、ここでは一体一体大きく創られて居るということで、成程いやまして迫力がある。丁度秋の15時過ぎなのでもう薄暗くなってきており、さらに堂内は闇に溶け始めているが、それがまた伽藍の静謐さと大きさに包摂されるような心持になるに十二分のシチュエーションである。ヨーダのような萎びた顔に輝く眼を持った案内係は容赦なく専門的な講釈を滔々と続けている。聴講している人数は僕を含めて2人。何度も「皆さん既にご存知とは思いますが・・・」と云いながら淀みなく話を続けるのだが、いやいやこれらの話はひじょーにマニアックなんでございます。質問すると何だかプライドを汚されたような貌をされたが、めげずに何度か繰り返し訊いていると輝く眼が少し友好的なものに変わった。そうそう、興味がある人ってことでご容赦くださいませ。
覚園寺建長寺と土地が隣接しているそうだが、みるからに威圧的な建物が肩をいからせている建長寺と比べ、奥床しく素朴で鄙びた内省的な雰囲気であって、凛とした空気が漲っているけれども適度に自然に委ねられゆっくり朽ちて同化していくような趣であった。奈良のあたりの寺で、ガラスなど一切はめ込まず風雨に直接曝されることもあろうなという処があったりするが、覚園寺も比較的そんな感じに近いところであった。

お賓頭盧様は、触れることをいいことに、どのように創られているのだろうかと全身撫でまわしてみたが、意外と本体は軽そうだった。また、身体の中は空洞のようだった。中は刳り抜かれているのだろうか。長い年月ですっかり水分が失われて、空洞が生まれたり軽くなったりしたのだろうか。一木造?乾漆造?

ヨーダ様は、滔々と説明を続ける。「この天井をみてください、此処に○○○○○○って書いてあるのがみえますか?これは足利尊氏公直筆のものでございます。」「柱と柱の間をみてください、段々と幅が短くなっているのはお判りでしょう?これは入り口に近いほうが人が良く出入りするので間が長いのですね。現在の1間と云うのは1.8mでございますが、当時はその1間と云うのももっと短かったのです。云々。」「この木は何の木だかご存知ですか?この木はメタセコイアと云います。さてこの樹は樹齢何年でしょう?…実は60年なんですねえ。これは何千年前の古い種の樹が、四川省で発見されて、そこから株分けされて、云々。」「追善供養と云うのは亡くなった方を少しでも…」「地蔵菩薩弥勒菩薩が降臨されるまでの間…」「この住宅は…」「この洞穴には…」云々云々云々云々。
成程、寺を回るのに50分かかると云うのは、すごく歩いた先に何か秘仏や秘堂のようなものがあるというようなわけではなく、この講釈を十分に聴くための時間だったのか。何だかものすごく細長い山道をひたすら登るための時間なのかと思っていたが、そうではなかった。


http://www.kcn-net.org/kokenchiku/kakuonji/kakuonji.html

覚園寺を後にして、帰りがけに鎌倉宮に寄った。鎌倉宮ほど、みるからに色々とおどろおどろしく陰湿な場所はないだろう。まあそれは仕方ないと云えば仕方ない歴史なのだから仕方ないのだけれど、それにしても異様な場所である。すぐにでも怨霊の血が降り注いできて金縛りにあった挙句に自動的に切腹させられそうな感覚と云ったらしっくりくるか。

さらに頼朝の墓や、島津忠久毛利季光大江広元の墓まで足を運んだ。このころにはもう日が殆ど落ちてきており、薄暗いなか、只管石段を上り、ああ、これが墓か。と確認して下りる。という機械的な行為になっていた。ただ、島津・毛利・大江の墓の石段の下あたりに屯していた、真っ青の地に大きく十字架があしらってあるTシャツを着た、でっぷり太って髭を生やした白人はいったい誰だったのだろうか。こんにちは、と声をかけられたけど、あ、と云って、少し距離をとりながら気にしないようにしてその場を去った。
帰りに、西御門と云う地名。ああ。此処が、江藤淳の家があって、彼が果てた地なのか。

http://www.geocities.co.jp/MusicStar/7692/080/089.html

http://map.yahoo.co.jp/maps?ei=UTF-8&type=scroll&mode=map&lon=139.56092176&lat=35.33115369&p=%E7%A5%9E%E5%A5%88%E5%B7%9D%E7%9C%8C%E9%8E%8C%E5%80%89%E5%B8%82%E8%A5%BF%E5%BE%A1%E9%96%801%E4%B8%81%E7%9B%AE&z=16&layer=pa&v=3&ac=14204&az=036001



・小腹が空いたので、八幡宮近くの甘味処・そば処の「こ寿々」にてわらび餅と蕎麦を食す。此処は鎌倉に行ったら絶対に寄りたいと思う。勿論本体もいうまでもないが、蕎麦湯までもが最高。

http://tabelog.com/kanagawa/A1404/A140402/14000268/



・鎌倉の夜は早い。小町通なんかは七時過ぎるとどんどん閉まってしまう。
・帰る前にミルクホールでプリンセットを頼む。そこに置いてあった絵本がなかなか良かった。ささめやゆきと云うひとの本らしい。宮沢賢治の「よだかの星」を描いたのが特によかった。
http://loco.yahoo.co.jp/place/g-5Nra-GRlUfc/?utm_source=dd_spot
http://www.ehonnavi.net/ehon/22927/%E5%AE%AE%E6%B2%A2%E8%B3%A2%E6%B2%BB%E3%81%AE%E7%B5%B5%E6%9C%AC%E3%82%88%E3%81%A0%E3%81%8B%E3%81%AE%E6%98%9F/