フタバ画廊でのキュレーション、

ユニット「ウロガバタフ」の活動


1.現代美術の画廊でのキュレーション

2.作品としての画廊──ユニット「ウロガバタフ」



1.現代美術の画廊でのキュレーション

polonium以後のキュレーション活動として、2008年の3月から2009年6月まで、銀座一丁目のフタバ画廊のいくつかの企画を提案したり任されたことが大きな活動として挙げられます。
オーナーが高齢ということもあり、スタッフである私がおもに作家さんと交渉し個展の開催を呼びかけると同時に、連続企画「Gallery EXPECTS Re-presentation」、「Message from FUTABA!!」や、「フタバ画廊年末年始小品展2008−2009」「FUTABA FRESH ARTISTS 2009」などの様々なグループ展を企画し、開催しました。

1年3カ月という期間でしたが、創業以来42年の歴史を誇るフタバ画廊の企画を任されるという責任は非常に大きなものでしたし、そのなかで様々な作家、評論家、プロデューサーやギャラリストと意見を交わし、これらは滅多に得られない貴重な体験でした。
様々な作家の個展の搬入搬出セッティングや、グループ展の企画構成など実に多様な作品と状況に遭遇し、柔軟性ある対応、その場での瞬時の判断力を求められることにより、あらゆる感性に対する共感能力が拡がりました。また様々な作家に関わった結果、私自身も数ある作家のうちの一人であることを冷静に自覚し、そのなかで何を実行していけばよいのかを改めて考えさせられ、表現活動を含め、自己を多角的に見つめ直すきっかけにもなりました。2009年6月をもってフタバ画廊は閉廊しましたが、このように非常に大きな経験の蓄積の場となりました。




      


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<フタバ画廊企画開催一覧> (山本が主に交渉・企画・立案した展覧会)


2008.9.08−9.14 Gallery expects Re-presentation vol.1         
秋葉シスイ/浅枝木綿子
2008.9.15−9・21 Gallery expects Re-presentation vol.2           岩野仁美/辻由佳里
2008.9.22−9.28 「フタバ画廊」
ウロガバタフ(山本浩生と渡辺望のユニット)
2008.10.06−10.12 Message from FUTABA!! vol.1 「デザイン≠ファイン?!」
古谷萌/浅沼千安紀/風間優佑/田中千尋/梅田重明
2008.10.27−11・02 Gallery expects Re-presentation vol.3          宮嶋克倫/坂光敏 
2008.11.09−11.16 Message from FUTABA!! vol.2 「日常とそのスキマ」
坪井麻衣子/渡辺望/浅野満/長雪恵
2008.12.21−12.27 「フタバ画廊年末小品展」 
浅野純人/飯山満/大平暁/大竹秀明/下小川毅/加藤苑/倉谷拓朴/
弦間佐和子/平丸陽子/増川朋花/箕輪亜希子/三輪洸旗/屋宜久美子
2009.01.05−01.11 「フタバ画廊年始小品展」
安倍千尋/阿部仁文/一色映理子/大成哲雄/沖葉子/桁山晃/五味良徳/鈴木亮輔/田崎冬樹/田中怜/繁田直美/長谷川彩子/福山一光
2009.01.12−01.18 「FUTABA FRESH ARTISTS 2009」
林こずえ/川井絵理子/武田倫子/高久由紀/一美里/烏山秀直/佐藤イチダイ/中田チサ/加藤優花/日比野拓史/庭野梓
2008.02.16−02.22 Message from FUTABA!! vol.3 「micro-macro」
山本浩生/山中準/Yoshie NOSE

他、個展依頼・展示セッティング他様々なサポートを含め多数関係
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






2.作品としての画廊──ユニット「ウロガバタフ」 

フタバ画廊の様々な企画の一環として、一緒に勤務していた渡辺望という作家と共に、2008年9月、「ウロガバタフ」というユニットを組んで「フタバ画廊」を主題に作品を発表しました。
この作品は、まず画廊空間壁面のモニターに、有名絵画の構図やポーズを現代の若者が再現するいわばパロディの映像を流し、さらにそれを観ている観客の後姿を撮影した映像を、リアルタイムで画廊内の別の空間に設置したモニターに映し出す、という構造になっています。




         






画廊内壁面のモニターに映し出されている有名絵画のパロディ映像(左)。若者達が演じているのは右の絵のポーズ。パロディ画像の左端の人物は、「作品」を観ている「観客」を演じている。







ウロガバタフ「フタバ画廊」全景 
2009 PHOTO BY 安斎重男



この作品は、観客「自身」がいなければ作品自体成立し得ないものです。そういう意味で、主体は観客なのか作品なのか、それとも作家なのか、主体と客体の関係を転倒させるような装置として機能しています。作品は観客に、視覚によって捉えられる。同時に観客はカメラによって捉えられる。つまり、見る者は見られている。「フタバ画廊という空間」によって、観客は見られる存在=作品となる。 
つまりここでも、何が本物なのかを観客に問いかけ、「観客」「作品」「作家」「画廊」「美術」・・・といったあらゆる概念と役割の境界線を徹底的に撹乱しているのです。
「境界」の問題やオリジナルと複製の攪乱という私の従来からのコンセプトに、渡辺望独自の表現媒体である映像やインスタレーションの技術手法を加えて、ユニットならではの新たな作品を創り出すことができました。同時に、「画廊」「空間」そのものの存在や「観客」という概念に疑問を投げかけるといった試みでもありました。