「境界の世界」2004−2006




「境界の世界」2004−2006
フタバ画廊(2004個展、2006画廊企画展)
横浜馬車道北仲WHITE (2005個展)など




2004年の個展では、初期作品の「日常物体−接写」での接写技法を応用し、様々な日常的な物体を<組み合わせ>、それによって現出される「虚構空間=世界」を撮影してみました。


この段階においては、もはや<撮影された対象が元は何であったか>という種明かし的な要素は背景に後退し、日常的でチープな素材そのものが組み合わさり、混ぜ合わされることによって生成されるウェットかつ有機的で奇妙な<世界>そのものに焦点があたってきます。


この<世界>は、あくまでも写真撮影により枠に切り取られることで成り立つ<世界>であり、少しでも切り取られたはずの外の部分が仮に見えてしまったとすれば、たちまちのうちに日常的なチープな素材そのものが前面に出てきてしまい、<世界>は成り立たなくなってしまうようなデリケートで儚いものです。それは、イリュージョンというものの儚さといってもいいでしょう。


その<世界>が成り立つか成り立たないかの境界上での「ぎりぎり」な戯れ、そしてその戯れから<世界>を抽出する作業のなんと楽しいことか。


ウェットで毒々しいが美しくもあるという両義性と、流動性使用している素材は人工的なものが多いのに、流動的であるということで、何故か「いきもの」っぽさが加わってきます。
錬金術で、違うもの同士が融合して新しい質に変化した瞬間が、異常なまでに美しいと聞きますが、そんな変化の瞬間の境界性のエロティシズムを、この作品を制作しているときにも感じました。






            




「虚構世界1」印画紙・フォトアクリル加工/2004           「虚構世界2」印画紙・フォトアクリル加工/2004  
各127㎜×189㎜