菅直人首相



菅直人が首相になる。鮮烈なイメージは、普段はない。状況が状況だし、結局菅か、とおもわれがちである。しかし菅は、意外とどのような状況になろうとも図太くマイペースを失うことなく、長くやれそうな気がするのだ。
安倍は中身が吃驚するほどなんにもなかったし、麻生はいろんなところで鈍感すぎた。福田と鳩山は、首相になってしまうと、責任の重大さに敏感になりすぎたのか、マイペースと自分のスタイルを押し通せず、いい人になりすぎてしまった。そういう点、菅は彼らよりちょっと一筋縄でいかないような根深さを感じる。マイペースを崩すこともなく、そんなに鈍感でもなさそうで(鋭すぎもせず)、しかもユーモアや遊び、抜け、ひらきなおりなどの感覚も持ち合わせていて、そしてそこそこ胆力もありそうである。地味すぎるわけでもない。かといって華やかなわけではないけれど、コレぐらいでちょうどいいのかもと思わせるくらいな魅力はもっている。厚生大臣のときの謝罪を筆頭にカイワレパフォーマンスや四国霊場めぐりなどの話題性や実践力もそれなりにある。けんかっぱやいというが、「イラ菅」的なところはそんなになくさなくてもいいんじゃないだろうかとおもう。意外と敵が多いようで、鳩山とも小沢とも程よくいい距離を保ってきていたような気がする(かといって八方美人というわけでもない)。何よりも失点や欠点などのネガティブなものをネタにして、ツボをついたパフォーマンスでかえってポジティブで鮮烈な印象を焼き付けてしまうというセンスに優れている(ふだんそんな華やかでもないのに)。程よく不器用なところやドジなところ、脇の甘さもあり(それらは多分致命的にはならないところで)、そして悩みを独りで抱え込んでしまうタイプでもなさそうである。
意外とこのひと、ものすごく色々な要素が「程よく」バランスとれているのである。この絶妙なバランスさえ失くさなければ、選挙管理臨時内閣とか云われているが、最初から「程よく」期待されすぎても居ないし(無難に選挙を乗り切れば)、きがつけば長期政権になっているかもしれないとおもう。


鳩山由紀夫の魅力の移り変わりは、激しかった。野党時代の鳩山は、話は判りやすいし聴き心地も大変よかったが、全然中身の深さを感じなかった。まるでスナック菓子のようであった。しかし、あの衆議院選前からの鳩山は明らかに違った。物凄く精悍になり、言葉に説得力と気概が出てきた。首相になっての演説は、たしかに感動的なものがあった。グッと自分にみんなを引き寄せるカリスマ性があった。輝いていた。しかし最近の鳩山は、もうミイラのように精気がなく、視線も虚ろで表情に乏しく、頭を振ればかさかさと音をたててくしゃっと壊れてしまうような態であった。人間、いいほうにも悪いほうにも変わるものである。しかし、菅は、色々なことがあったけれども、どこか一定しているところがある。菅は、「パフォーマンス」はするが、「キャラクター」はつくっていない。鳩山は、その時々で「キャラクター」まで違ってしまう。菅は鳩山のように激しくは変わらないような気がする。やはり、「そこそこ」「ぼちぼち」「意外と」期待してもよかろう。