メモ




・今年はゴキが一匹も出ない。たぶん下の人が引っ越して空き室になっているからだろう。


・鎌倉の教室。みんな9月中旬の発表に向けて頑張っている。しかし頑張りすぎて絵を完成させようとして、説明画になってしまうと、せっかく良かった絵もダメになってしまうので、そこだけは注意。完成させようと思わず、常に攻めの気持ちで!!

・Tと軽く飲む。その前に阿佐ヶ谷駅前のラーメン屋に入る。

ブックオフが百円以外の本がぜんぶ半額になっている日が一日だけあった。滅多に百五円にならないちくま学芸文庫がごっそりなくなっていた。その次の日、同じ通り沿いの古本屋が、文庫全て百五円で五日間だけセールというのもやっていた。やはりめぼしいちくま学芸文庫岩波文庫講談社学術文庫などがごっそりと、なくなっていた。

・『海は甦える』二巻読了。三巻目。いやー長いけれど面白い。幕末からの日本の歴史がほんとうに頭に入ってくる。情景が目に浮かぶ。けっこう登場人物に関してくどいほど同じような描写が何度も何度も出てくるので、キャラがすりこまれるのだろう。いつも目をクルクルさせている桂太郎、虎の目の山本権兵衛、一夜で痩せて骸骨のようになってしまった小男の小村寿太郎、肺病で息もも絶え絶えなのに執念で不平等条約を次々に克服していく痩せながらも端正な陸奥宗光。常にフーイ、といいながらざっくばらんに話す勝海舟。神主のような謹直な山県有朋。大西郷、西郷従道、大山巖の、温かい目のなんともいえない包容力の系譜。変幻自在で煮ても焼いても喰えない元老の伊藤博文。厄介な井上馨。あっけらかんとしてお人よしな江戸っ子榎本武揚李鴻章の、眠れる獅子・清帝国の威信を体現するような、立派で鷹揚な(そして情に訴える)態度。
原文の文章がふんだんに織り込まれていながら、不思議なほどすらすら読めるのは江藤淳一流の論理力がものをいっているのだろう。前後の繋がりで、かくも(現代人にはとくに)煩わしい文語調、漢文調な文章(特に公的な文書等)を鮮やかで魅力的に読ませてしまう。
開国した日本にとって、海、海軍は、如何に重要だったのか。その海軍を引き継ぎ、旧弊を打破して近代な海軍を組み立てなおして育てた山本権兵衛。日清日露戦争は、如何にぎりぎりのところで切り抜けてきたのか。日本と云うのはなんと常に難しい位置にいたのか。日本の世論と云うものの「怖さ」。

三巻以降も、じっくり読もう。