大吉、八王子、劉生、祖母、音の色



・一か月ぶりに帰る実家。なんだかもう暑いくらいの気候。家族で高幡不動へ参詣。ちょうど骨董市もやっている。最高の日和であった。おみくじをひいたら大吉。


・そのあと八王子に戻り、八王子夢美術館でやっている岸田劉生の展覧会に行く。美術館に行くまでの道のりには、植物の種を専門に扱う店とか、帽子専門店やミシン専門店など、上野浅草エリア顔負けのマニアックな専門店が軒を連ねていた。八王子駅周辺はなんだかつまらないが(駅ビルに入っているそごうは、今年いっぱいで閉店だと云う)、ちょっと駅から離れた街道沿いが面白ポイントのような気がする。美術館の帰りに大福や道明寺などを買って、実家でお茶をする。


・引っ越しの整理で出てきた、VHSのテープを久しぶりに家族で観る。1986年の年末から87年の正月にかけての我が家の映像が百二十分テープにておさめられていた。撮影者は殆ど父。祖母にピアノを習う幼き日の私。十何年ぶりに聴く祖母の声。記憶の中の祖母の声と、やはり一緒である。正月。百人一首を母が詠み、祖母と私が対戦。一枚差で負けてしまう。悔しくて激しく泣いている私。「一枚しか違わないのにねぇ」と祖母の声。最後のほうにテレビに映る千代の富士―栃司の一戦。千代の富士が万全の上手投げで勝つ「いつも」の光景。父と相撲。粘る私。投げられる私、たまに押し切る私。ピアノの練習に熱が入る。祖母はいつも旋律を歌いながら教えてくれていた、それがなんともいえなくまろやかで心地よく、自然に<音楽>が導き出されてくる。音に色が出てくる。表情が出てくる。