十日分以上の日記





・十一月も下旬となり、あっと云う間に冬の光と空気になった。ベランダに出してあった植物を家の中に取り入れる。色々なイベントが在り過ぎて、それぞれが非常に興味深過ぎて、かえってブログやツイッターにもかけずに二週間くらいが過ぎようとしている。


日曜日、久しぶりに何もなく過ごすことができたので、写真や音源の整理をする。朝の冷気が鋭くなっている。
土曜日、朝清瀬。Kと渋谷に出てつけめんやすべえ440グラムを食す。その後三軒茶屋へ。KENにて『河合拓始 ピアノソロ・コンサートat KEN vol.2「野火」』を聴く。河合氏は風邪をひいていたようで、最初ボルテージをあげるのに多少時間がかかったようにも思ったが、全体的には流石に素晴らしい音質で、良い演奏会だったと云えるだろう。そして朗読もピアノの音質と響きあっていた。往々にして文学的なものを主題にとりあげ、然も朗読が折々に挟まるとなると非常に物語的になって「演劇的」になりがちのように思ってしまうのであるが、河合氏の場合は、正統的に物語の筋を踏んでいるのにもかかわらず非常に抽象的/構造的に聴こえるのである。矢張りそれは勿論曲の構成の仕方に拠るところもおおいのだろうが、矢張り河合氏の音質によるところが大きいであろう。彼の音質は、特にフォルティッシモがたいへん豊かな芯の深い音であり、身体の奥にまで響いてくるのである。全くべたついたところがなく非常に硬質なのであるが、併し同時に「熱さ」も帯びており、それが「野火」と響きあうのだが「演劇的」には聴こえないと云う稀なる状態なのである。
また彼自身も云うように、夕方の薄明りのように境界線が薄らぎ融解してしまうような、持続音も魅力である。付け足せば、彼が最近書き始めたと云う詩のようなアフォリズムのような「ことば」を纏めた冊子を売っており、それが非常に興味深かった。今回の「野火」は2006年作だと云うが、今度は河合氏本人の文で曲を構成したら面白いと思った。
金曜日 高円寺、中野まで。図書館に借りっぱなしになっていたCDを返しに行く。夜、清瀬
木曜日 朝、Kと荻窪〜青梅街道〜西荻窪まで散策。途中のクイーンズ伊勢丹の上に在るモスバーガーで休憩。西荻窪駅に出て、久しぶりに音羽館。『アラザル』一号が300円で売っていた。500円のところ300円なのだから、まずまずの値がついているのではないか?新宿に行き、パソコンを観る。夜、dhmoが呑もうと云ってきたので、家呑みをする。そのあとdhmo等の知り合いのSが来るというので、深夜一時過ぎに荻窪のジョナサンへ。Sが合流した後焼肉屋へ。午前三時過ぎに解散で、べろんべろんに酔ったdhmoを彼の家の近くまで送り届けた。
水曜日、鎌倉絵画教室。
火曜日、専門学校。最終課題前の静物画。そのあと新宿でKと待ち合わせ、花園神社の酉の市に行く。見世物小屋で鶏を食うギャルや、恐らく八十歳は超えているであろう人間火炎放射器、蛇を食ったり鼻から口に鎖を通してバケツを持ち上げたりする小雪太夫などが居た。十年ぶりくらいに観ることができた。その他五平餅、りんご飴、たこ焼き、切り山椒等を購入、食す。りんご飴は中の芯が腐っていて驚く。
月曜日、南行徳。
日曜日、風景画教室@森下。川沿いを描く。終了後近くの洋食屋。その後高円寺に出て、大学学生有志の写真企画に行く。高円寺から阿佐ヶ谷までをみんなで歩きながら日常的風景を写真に撮る。その後阿佐ヶ谷のドトールに入って講評会。最終的には荻窪に出て、比内鶏の店に入り、乾杯。SE、YS、WT、SM、MH、MY、HR。
土曜日、大雨の中、三軒茶屋のKENへ。鈴木治行半個展。最初から最後まで変幻自在と云うか、適材適所と云うか、興味深いところが多すぎて、言葉を失う。特に二十分以上ある最後の曲が圧巻で、太田真紀が電子音楽に組み込まれた声と会話をしながら音楽が進行したりして、オリジナルとコピー、そしてそれが最終的に「オリジナル」として「ライヴ」でまさに聴く音楽になっていたのには驚嘆した。
そのあとMRYとKと、大雨の中三宿まで歩いて、台湾中華料理屋に行く。名前は何だか忘れたがMRYも私も其処に美味しい中華料理屋があったと云うことを憶えていて、だったらせっかくなので是非行こうと云うことになったのだ。期待に違わずどれも非常に美味で、汁の一滴一滴すら舐めつくさずば勿体ないくらいであった。今日は三人だけと云うこともあっていつもよりもよりプライベートな話や普段なかなか聴けなかった疑問などを深く突っ込んだ話をする。何とも愉しい。靴の中が雨でびちょびちょになっていたが、そんなことはもう全然気にならないくらい充実した気持ちで、帰宅。清瀬
金曜日。荻窪
木曜日、清瀬。昼、Kの用事で東京音大に行く。そのあと写真を撮りながら鬼子母神に行く。駄菓子を買う。そのあと渋谷ヒカリエのギャラリーを観る。大岩オスカール幸男等。都道府県別の特産品を集めたギャラリーは少し興味深い。もっと面白くできる余地もある気がするが。七階に下りて茶寮伊勢藤次郎にてチーズケーキを食す。多分人生のなかで一番美味だったと思う。それくらい満足であった。席も一番良い眺めの席だったし、ほうじ茶も美味しかった。ただ帰ってきてから調べてみて、食べログでの低評価には物凄く意外な感あり。他人の評価がどうだろうとやっぱり美味しいものは美味しいのだ。おすすめできる。三軒茶屋に出て、BATIKの公演を観る。黒田育世のダンスは格別であった。ただ、第一部が終わり満を持しての黒田氏のソロダンスの時、態々客席のほうに即席の舞台を創って、本来の舞台のほうに観客画移動してソロダンスを観るという趣向で良かったのだが、残念だったのは下からダンスを見上げるために足がみえなくなってしまったことだった。これではせっかくの全身の美しさが半減してしまう。どうせであれば、即席の舞台の板を透明なアクリル等にするなどの工夫が欲しかったように思う。
水曜日。新宿K`Sシネマにて「眠り姫」を観る。そのあと初台に出て篠山紀信の大規模な個展に行く。こちらは掛け値なしに素晴らしい展覧会。







・購入
『ラオコオン』絵画と文学の限界について レッシング著 斎藤栄治訳 岩波文庫
『賢人ナータン』 レッシング作 篠田英雄訳 岩波文庫
『エミーリア・ガロッティ・ミス・サラ・サンプソン』 レッシング作 田邊玲子訳 岩波文庫
『さ・え・ら』佛蘭西文藝随筆 辰野隆著 白水社版 
『言葉の機能に関する文学的考察』批評家の手帖 福田 恆存 新潮社
早稲田文学π』わりきれないおもしろさ号 早稲田文学
『JALスチュワーデスのトラベル英会話』 日本航空スチュワーデス編集制作 キョーハンブックス
ヒューマニズムの倫理』 武部久 勁草書房
『これからの「正義」の話をしよう』 マイケル・サンデル 鬼澤忍訳 早川書房