北千住、加藤みつこ、石井博康、無印有楽町店



・金曜日。二時に北千住でいとこと待ち合わせ。北千住という駅は初めて降りるので新鮮。駅前のフラワーショップにてちいさな花束を購入。その足で銀座に向かう。



・加藤みつこ展。銀座、藤屋画廊。加藤氏は、多摩美日本画出身で博士号まで取得している才媛である。ギャラリーに勤めていたときに一緒に働いていた同僚であり、いろいろとお世話になった。彼女は、美術的な事柄における感性の幅はもちろん、あらゆる知識も豊富で、実務的なことから社交的なことまで非常にオールマイティに細部まで「立体的に」気がつくひとである。けれども、決してそれが人を萎縮させるようなことはなく、つねに気持ちよくリラックスして明るく、驚異的なバランス感覚の持ち主だといつも感嘆していた。つねに臨機応変かつ柔軟なのである。

フタバ画廊で展示していた時代から非常に知的で緊張感ある空間を創っており、ただ日本画を描くというよりは、インスタレーション的に作品を構成してひとまとまりの世界を提示していた。その世界はずば抜けて鋭利な冴えがあったのを記憶しているが、しかし今回の個展はちょっとラフにいろいろ実験しているという趣きであった。
ただ実験しているとはいっても、今回はむしろ非常にオーソドックスな日本画に取り組んでいるといえる作品群である。どの作品も、けっこうあっさりした描き方をしており、日本画の技法で気軽にドローイングを積み重ねている。そして、次なる結晶が出てくるまでのびのびと試行錯誤しながら研究している「過程」の成果という感じであった。殆どがあっさりした描き方なので、近くから観ると抽象画のようにもみえるが、すこし遠くに離れてみると雲にみえたり松に見えたり、地平線や水平線にみえたりもする。「流れ」や「リズム」というような根源的な要素を探求しているような、より抽象的なドローイング的絵画も飾ってある。

今まで(僕が知る限りの)緊張感ある絵画群(空間)とは随分趣きを異にしたライトな感じではあるが、寧ろ一旦思い切り「なにものかに縛られている自分」を解放してみようというような肯定的な意味での開き直りが、ごく自然なかたちで出せてきたのではなかろうかと感じる。いつもの臨機応変かつ柔軟で、立体的に、好奇心をもって生きている彼女らしさが前面にでてきて、この感じはこれでいいなあ、と思った。


大小数多の作品のなかで、ひとつだけちょっと趣きのちがう、パステル調の抽象画があって、それがとても普段の加藤さんの魅力が出ているようで好きだったが、加藤さんに訊いてみた所やはりそれが自分のなかでもおすすめという答えがかえってきた。確かに、試行錯誤から「抜け出して」きているようなひとつのまとまりのある、新しい加藤みつこの世界が展開されていくような感触が、そこにはあった。たぶんまた一年後、二年後、それがより確かな結晶として結実していくのであろう。
http://blog.goo.ne.jp/mitsuko325mk
http://blog.goo.ne.jp/fujiyagallery



・個展会場で、画廊で一緒に働いていたI氏と作家のY氏に一年半ぶりに会って、加藤さんといとこと5人で話す。画廊で働いていたときはほんとうにジェットコースターのように日日めまぐるしく神経をすりへらしていたのを思い出しながら会話をする。ああ、あれからまだ一年半しか経っていないのだなあと。実感としては、もう五年くらい前の感じだ。





ベローチェでひと休憩した後、ギャラリー58の、石井博康展に行く。石井氏にもたびたび、お世話になっている。非常に大胆でざっくばらんなところがある、気風のいい頼りになるきさくな方である。絵のほうも、そのような気質がそのまま、おおらかに雄大に出ているところがあって、へんに抑えていたり遠慮しているところがなく、悠々自適に筆を走らせているといった趣きだ。

絵の質は、「土」的な湿り気があり、非常に温暖湿潤気候的な肌触りである。表現的には、中西夏之と坂口寛敏とゲルハルトリヒターの要素が、5対3対2くらいの割合でブレンドされて、それを「石井蔵」で熟成醗酵したような印象なのだ。その醗酵の仕方は、やはり石井氏ならではというようなところである。絵自体としては、DMに使用されていた絵がいちばんまとまりを持って視覚に訴えてきたが、その熟成具合がもっとも匂いたつように出ていたのが、正面に飾られていたでかい絵である。この絵には、なにか渦巻く情念のような、のたうちまわる大地の「うねり」みたいなものがあって、決して心地よくはなくて寧ろ気味が悪くも思えるけれども、なんだか無視できない「圧力」「重力」があるのであった。
照明が蛍光灯だけであったが、DMの作品はそれが非常にしっくりきていたのだけれども、他の作品では、もう少し照明を工夫することによって、よりよく魅せられるのではないかと思う。
http://geiriki.com/ten/detail.cgi?id=10025646
http://blog.gallery-58.com/?eid=1054631


残念ながら石井氏は在廊しておらず、少しギャラリーのオーナーさんと喋ったあと、画廊をあとにする。




・石井展のあと、無印有楽町店にて食事&ショッピング。ハローウィンなのでおもちゃかぼちゃを買う。前にもおもちゃかぼちゃを買って、乾燥させたものをインスタレーション作品に使用したが、今回のかぼちゃもいい状態で乾燥できたら、立派な置物になりそうだ。無印のフードデリコーナーは、画廊に勤めていたとき、昼休みにちょくちょく利用した。非常にヘルシーで健康的。そして家庭的な味付けだし、塩や油を抑えてあって、何気におすすめな食事どころである。いとこは、花を購入。僕は、いとこに薦められたノートを買う。





・土曜日。台風なので仕事も休み、一日中Mと家に居て読書や仕事を進める。