ゴールデンウイーク




・三日夜。YHと四時前くらいまで家で話す。彼は小学校の教師をやりはじめ、前よりも随分と活力が出ている印象。ただ、絵に対するアンヴィバレンツな気持ちはふつふつと心の内奥に溜まっているよう。絵に関しての思い込みがとれたら、文章に関してもなにに関しても、YHの豊かな才能がいっぺんに繋がり、巨輪が咲くだろう。クラシカルで静謐でロマンチックな。




・四日、YHとともに家を出て、ドトールで朝食。ミラノサンドBが好物だが、ミラノサンドBが大分変化して新しいバージョンになっている。少し豪華になっていたのでいいけれども、前のほうがエビは沢山はいっていた気がする。朝食後、私は鎌倉の絵画教室に行く。YHも横浜まで一緒に帰る。(彼は根っからのハマっこである)。絵画教室は、良い季節になってきて、一時期のすこし不安定な感じから、またまろやかな雰囲気が戻ってきて、とてもリラックスして出来る。帰り、大船でチーズケーキセットを御馳走になる。




・五日。両親が一年ぶりに荻窪に来る。夕食にビフテキを焼く。焼け方がうまくいき、喜んでもらえる。






・六日。KKとお茶。結婚おめでとう。この頃ほんとうにみんな結婚してゆく。私の友人たちは結婚するのが遅いと思っていたが、二十九を過ぎるあたりからぼこぼこ結婚していき、初めてなんだか取り残される感と云うものを少しだけだけれども感じる。


根津美術館サントリー美術館に行く。根津美術館は何と云っても庭を散策できるのが良い。「国宝 燕子花図屏風 2011 」を開催中。燕子花図屏風をみて、それから庭に出ると、池に燕子花が群生していて、満開であった。実際の燕子花は目に痛い程の蛍光紫、殆どルミナス・バイオレットと云う感じの鮮やかな色であったが、絵の燕子花では紺色の落ち着いたトーンであって、その違いが興味深い。絵に描いた燕子花と、庭に咲いているのは、単に品種が違っただけなのかもしれないが、絵でこの色を使ったのは背景の金箔との折り合わせが良いからということもあるのだろう。金色とその紺色が絶妙なハーモニーを奏でていて、シンプルな画面がたいへん心地よい。シンプルなだけに、燕子花の配置のリズムが純粋に愉しめる。入って最初に飾ってあった、桜の屏風絵も興味深い。大画面にいちめんの桜の木。油絵とみまごう程花びら一枚一枚が顔料によって盛り上げられている。日本画だと思えない、図案が手前に飛び出てくる印象。「日本画」の前衛展に出品されていた船田玉樹の「花の夕」を憶いだす。


サントリー美術館は根津に比べて、私の好みと云うか感性に直接しっくりくる作品が多い。なんだかエロティシズムの分量が多いみたいだ。光悦と宗達のコラボレーション作品が良かった。ガレの「ひとよ茸ランプ」が圧倒的な存在感。照明や展示に異和感を感じるところがある。地震で神経質になっているのもわかるけれど、絶対に割れないようにワイヤーで固定しまくっている感じが、たいへん心地よくない。器を乗せる台座がチープすぎて興を削ぐ。「ひとよ茸ランプ」のライトを点けているにもかかわらず上から強い照明をあてるナンセンスさ。あれは少し暗くみせるほうがよいのだ。


・Time&Stileなどの雑貨屋さんも一通りみる。ふとみると村上綾氏の作品が飾ってある。以前、末永史尚氏も飾っていたところだ。飾ってある作品は、知的でお洒落で繊細な作品が多い。お店と現代美術とのコラボレーションでは一番の成功例だとおもう。


・夜、原稿書き。