再会、御苑、やっと穏やかな日





・火曜日、朝から専門学校。午前三年生ドローイング、午後一年生風景画、新宿御苑へ。非常に好天。いい感じで二週課題を終える。その後、代々木から歩いて、原宿のデザインフェスタギャラリーへ。


デザインフェスタギャラリーのグループ展「Making展」では、四月のとき一緒にグループ展をやった、田中千尋と梅田重明が参加して居る。
田中は、前からの主題である信号機に焦点をあてて、よりコンセプチュアルなものが明確になってきたように思う。信号機の種類、構図、露出、作品の大きさ等、これをきっかけにどんどん「みせかた」を洗練させていってほしいと思う。まだ「一般常識的」な範囲で終わってしまって居るのがもったいない。彼の頭の良さ、鋭さ、冴え、キレ、センスから考えると、もっともっと振りきれていくことは可能であろう。まだまだ、まだまだマニアックになれる。まだまだ「狂気」が足りない。とはいえ、デザイナーとしての仕事もだいぶ板についてきたようだ。作家としても、「王道的」な道を歩んでほしい。

梅田の作品は、非常に技術的に上手くなってきている。梅田の持ち味である、油絵の特性を生かした「ゆらぎ」を失わずに、デッサン力、ドローイング力ともに向上して居る。あとは、じぶんがなにを・どういうことをほんとうに表現したいのか、腰を据えて考えていくこと、自覚していくことである。「情報」「技術」「知識」などの向上ぶりは目覚ましいのだが、それらに惑わされてしまい、ほんとうにじぶんが何を目指しているのか、何をやりたいのかがまだまだ明確になって居ない。ひとつひとつの持っている「もの」は非常にいいものをもっているのに、整理整頓できずに、宝の持ち腐れと云う感じで、もったいない。端的に云えば、コンセプチュアルな部分がまだ統御しきれていない気がする。ただ、まだ若干二十三なので、まだまだあがく時期であるのは確かだ。もっともっと迷っていい年ごろであろう。ほんとうのところ、まだまだ。「情報」「技術」「知識」も足りないと云う事なのだ。それらがシナプスの様に繋がりを持って、それがしなやかに、有機的かつ自律的な運動として「圧倒的」に繰り広げられていくには、まだまだぜんぜん足りない。伸びしろがとてもある作家なので、期待している。


・ギャラリーでHYとTCと、ギャラリー終了時刻まで喋る。終わった後、TCと原宿竹下通りにある五右衛門パスタで食事。その後、阿佐ヶ谷に移動、西荻の近くまで散歩しながらゆっくり半年分のそれぞれの出来事を喋る。非常にいい時間であった。彼も疲れてはいるかもしれないが、非常に健康そうで良かった。十二時過ぎに解散。いい思考のリフレッシュにもなる。




・水曜日。久しぶりに非常に熟睡できる。兎に角滅茶苦茶忙しかったこの何日かを何とか切り抜け、久しぶりに穏やかで快調な朝を迎えることができる。十一時過ぎに起き、風呂に入り、ブランチを食べ、溜まっていた洗濯ものを干し、喫茶店で予定をたて、タウンセブンで買い物。写真を撮り、それからOKへ買い物。夜ごはんは久しぶりにカレーを作る。ごはんをしっかりと作れるのは、心に余裕が出てきた証拠。黒川直樹との写真倉庫UP。夜、黒川直樹の小説を読む、感想をおくる。これから、またいろいろ溜まっているものをやっていく。今日はさくさくと快調にやれる日であろう。


・黒川直樹×山本浩生フォト・コラボレーションブログ『写真倉庫』UP!
http://blog.livedoor.jp/yamamomomo5371/









・購入
『あいだ』 木村敏 ちくま学芸文庫
『幻獣辞典』ホルへ・ルイス・ボルヘス 柳瀬尚紀訳 晶文社
『季刊思潮 1988No.2 <分裂病>をめぐって』 木村敏中井久夫市川浩柄谷行人 他 思潮社
心理学化する社会』なぜ、トラウマと癒しが求められるのか 斉藤環 PHP







中井久夫の著作に衝撃を受けて以来、それに関連して精神科医、特に統合失調症の文献を中心に読んでいる。
中井久夫は、それぞれのひとの気持ちと云うものに対して、非常に肯定的なスタンスなのが良い。圧倒的な知識とあらゆる方面に対する鋭敏な感覚、持続する体力・精神力。かつ肯定的に柔軟性を保ち、尚且つじぶんを決して見失わないと云うのは、まさに驚異的である。相手の理論や感情、志向嗜好を徹底的に受け止めながらも、どんな手強い病者が来てもじぶんを見失わない。そして性急に解決しようとせず、色々な角度から、しっくりする感覚を常に模索する。じぶん自身、じぶんと他者との関係、他者の理解。さらに他者と他者との関連性、共通性、違うところ。そして絶対になおさなければならないというような「執着」をも或る意味いったん脇に置くことで、あたう限りの「良い流れ」を創っていく。粘り強く、腰を据えて、併し出るときには出る。機をみるに敏。
横綱相撲」「後の先」と云う事が頭をよぎる。受けて立つが、どんなことにも対処できて尚且つそれを柔軟に対処して、じぶんを失わない。寧ろそれが、じぶんの「型」なのである。双葉山大鵬貴乃花白鵬などの大横綱には、一般的な意味での「型」を越えた、そういう型にとらわれない「型」と云うもので、万全に勝ち星を積み上げていったであろう。
相手の気持ちを理解しつくし、思う存分そのみせどころを発揮させ、併し発揮させた力をも利用して、相手を包みこんでしまうような勝ち方。



僕の理想も最終的には、中井久夫のような、大横綱のような境地を目指したいと思っている。制作に於いても生活に於いても。大きく出たと思われるだろうが、大きく、出よう。


・金子武蔵『へーゲルの精神現象学』も併読。非常に繋がっている。