・いつのまにか街中でのマラソン大会に参加して走っている。新青梅街道のような普通の街道で、雨がぱらついており寒く、暗く、比較的夜のような雰囲気である。そして観客はだれもいず、ひたすら街道を走る。と、突然ぐんっと走れる気がして、ギアをあげると、不思議なほどのパワーが漲り出て、文字通り「ごぼう抜き」していく。何人も何人も、あっという間に追い抜いて、もう誰も先にはいないような感じである。一位だと思う。
そして順調にゴール地点がある、とあるビルの前に来る。併し其のビルには右にも左にも同じような地下の駐車場に通じるような道があって、どちらの筋道で行けばいいか忘れてしまう。まあ一位なのだし、どちらでもなんとかなるだろうとおもって、右の道に選択して進んでいったが案の定ゴールの道とは違うようだった。
まあ仕方ないと思って引き返し、左の道を進むと地下駐車場に進み、其処がゴールであった。ゴールしてみると、六位になっていた。間違えたのだから仕方のないけれど、ちょっと間違えただけでこんなに抜かされるのだな、と云う思いと、それでも六番だし、まあ大したもんじゃないかと思う気持ちと。
そして五番は、中学高校時代と同級生だったYであった。そいつは自信満々の野郎で、「なんだじじいは六番か」と云った。ちなみに昔Yに僕は何故か「じじい」と云うあだ名をつけられていた。(趣味が相撲だったり将棋だったり歴史だったりと、何となくじじくさかったからだろう)
ちくしょーとか思ったけれども、少し中学時代が懐かしくなった。


・Yは今何をしているのだろうか。京大に行って、それから理系の研究者になっている筈である。ちょっと検索してみたらスタンフォード大学で立派に博士を取って近頃注目の細胞に関しての論文を発表しているみたいだ。写真を観てみると、確かに彼ではあるけれども、何か少し違う雰囲気である。もとからハンサムではあったけれど、あまり特徴と云う特徴がない、雰囲気で彼だと判る様な感じだったけれど、もっとそんな感じになっていて、空気みたいな風になっていた。