渡辺望、坪井麻衣子、前衛★R70展



・昨日は、冷たい秋の長雨だった。大泉にある画廊で、渡辺望の個展があるので行く。 http://www.geocities.jp/nz4_1021/
渡辺望の作品は、基本映像インスタレーション中心で、それにセンスのよいドローイングが展示されることもある。前に私と渡辺とふたりで「ウロガバタフ」というユニットを作って、展覧会をしたこともあった。二年位前だが、もう懐かしい。
いつもながら非常にミニマルな映像を展開させていたが、今回はいつも以上に非常に詩的溢れる映像だった。一見、月夜と満天の星空が水面に映っている映像が、同じ位置のままひたすら画面に映し出されているだけなのだが、暗い室内の中に設置されている、その動かない映像をじっくりと観ているとそのうち目が少しずつ慣れてきて、とても繊細な世界をみせてくれるのだ。
満天の星空が突然ぶあっと煌いたり、数多の星のうちのひとつだと思っていた輝いている点が、ある瞬間から突然、ミジンコが星空を縫うように蠢いていったり、と思えば、ふっつりと消えてしまったりする。そんな微細な「震え」を観ていると、普段の忙しさやら何やらで切り捨ててしまっているようなものを、改めて少し見直してみようかという気持ちになったりする。



・渡辺望展をあとに、せっかく練馬のこのへんまできたのだからと、大泉学園のポラン書房に行く。http://www5d.biglobe.ne.jp/~polanet/ しかし途中で迷ってしまい保谷のほうまで出てしまう。冷たい雨が本降りになっていて、ズボンや服がぐちょぐちょに湿ってしまい、なんかもうここで力尽きるんじゃないかというほどネガティブな気持ちになったのだが、なんとか着く。店内はなかなか詩情あふれる店内であったし、品揃えも悪くなかったけれど、なにか決定打になるような本と出合えず、何も買わなかった。
それから家に帰ろうと思ったのだが、相変わらず雨が降っていて、自転車で三十分の道のりのことを思うと、やっぱり鬱になる。そういうときはとりあえず腹ごしらえをしようとおもい、ケンタに入る。少し元気になったので、冷たい雨の中、やっとのこと帰宅。その後珍しく二時間ほど昼寝。以後つかれていてなにをしたのか覚えていない。




・今日は、茅場町と銀座の画廊巡り。茅場町のSAN-AI画廊でやっている坪井麻衣子展。坪井麻衣子の世界も、渡辺望の世界とはまったく違うのだが、やはり普段忘れかけているような、「ちいさな」、繊細な「震え」をみせてくれる。 http://www.geocities.jp/maikotsuboi/index.htm 
ネガティブになったときも嫌になったときも投げ出したいときも、ひっくるめてまるごと、坪井の絵にかかればたぶんいい方向のベクトルにすっと引き入れてくれるんだろうな、というような感じだ。さりげなくもこころのいちばん根っこにあるささくれを取り除いてくれる。本の装丁や、絵本などにしてもとても馴染むような上品で繊細であたたかく、そしてちょっと、不器用な絵だ。それがまたよい。



・ところ代わり銀座のギャラリー58。此方は赤瀬川原平、吉野辰海、秋山祐徳太子中村宏池田龍雄、田中信太郎という巨匠達のグループ展。もちろん彼らの名は現代美術を齧っているものであればだいたいが知っているようなメンバーなので、黙っていても集客力はそれなりにあると思うし、作品はそれなりにいいものであるに決まっている。しかしながら、もう彼らは全員70以上。失礼ながら、「過去の作家」などといわれるに相応しい年齢になってきているのではないか。

・・・ところがどっこい、それを逆手にとってウリにしてしまった、見事なコンセプトで大成功したのが、この「前衛★R70展」である。 http://www.gallery-58.com/
七十以下は出品禁止!と銘打ち、七十以上になった今だからこそさらに出来るんだぜ、といわんばかりの、迫力あって新鮮な「老人力」を見事にまで浮き彫りにしてしまった。作品すべてが、「おれたちゃあまだまだじぶんかってにやってらあ!」といっている。なんと初日には合同記者会見まで開いたという。それにまた、パンフレットが非常にふるっている。彼らの思考・嗜好・志向・試行が一目瞭然で判るような面白いものだ。ずばり履歴書仕立てと来たか!。こりゃ一本とられましたわ。
それに画廊の前の壁に貼ってあった資料も、彼らの歩んできた歴史も一目で判るように工夫されていたし、なんだかんだいって、この展示こそ「企画展」というものの鑑なんじゃないか、と思った次第である。この展覧会を企画した画廊のオーナー、長崎裕起子さんには脱帽である。



・ギャラリー小柳、INAXもとても興味深い展示をしていたが、長くなってきたのでまた後日感想を書くかもしれない。あと、幾つかの画廊をいろいろ回った。