百円




・購入:
『逆さまゲーム』アントニオ・タブッキ 白水社Uブックス
『小麦粉博物誌』日清製粉株式会社編 文化出版局
百鬼園の手紙』平山三郎旺文社文庫
『昭和の侠客 鬼頭良之助と山口組二代目』正延哲士 ちくま文庫
『日本の右翼』猪野健治 ちくま文庫
『やくざ親分伝』猪野健治 ちくま文庫
『三代目山口組 ―田岡一雄ノート』猪野健治 ちくま文庫
『やくざ戦後史』猪野健治 ちくま文庫
『やくざと日本人』猪野健治 ちくま文庫



・やっと猪野健治の著作を纏めて安く買うことができた。相撲騒動以来、侠客・賭博・やくざ・暴力団・興業・見世物・縁日・遊郭アウトサイダーなどの関心が高まり、その関連の本を購入することもある。
山口組二代目・山口登と玉錦二所ノ関との関係はwikiにも載っているくらいである。春秋園事件で天龍たちが「革新力士団」を結成して相撲協会から一斉に出て行ってしまい、大相撲は真っ二つに分裂、協会は滅亡のピンチになったときに山口は、相撲協会再興に非常に尽力したらしい。

以下、『昭和の侠客 鬼頭良之助と山口組二代目』正延哲士 より抜粋


「・・玉錦との関係で二所ノ関部屋とも関係が深い山口登は、分裂した相撲界が何とか修復できないものかと奔走している。分裂したままでは、じり貧になっていくのが目に見えていた。高知での十二月興行は、毎年鬼頭良之助が勧進元として仕切っていた因縁がある。さらに、大関玉錦の故郷でもある。山口登は、玉錦のために分裂した力士団から多くの力士を復帰させて、大相撲の興隆を図ってやりたかったのだ。
 天龍らは関西角力協会を結成し、独自の番付を発表して活動を続けるが、その勢いは急速に衰微する。
 (昭和)八年一月五日、相撲協会は二年間不在の横綱玉錦を推挙し、帰参力士を含めた番付を発表した。
 協会内部には、玉錦を大酒飲みで短気で乱暴を働くなど、その行状から横綱に相応しい人格を備えていないと横綱推挙に反対する意見も強かったが、相撲協会復興のためには彼の実力に頼らざるを得なかったこともあろう。それよりも、山口登をはじめ、相撲の地方巡業に大きな影響力を持つ各地の親分衆の支援が大きかった。天龍は大阪を本拠に初心を貫こうとするが、大阪の親分衆も山口登に正面から対立する行動はとれなかったのであろう。
 山口登の身内の一人は、

 ―相撲がとくに好きで、自分自身も若い衆を相手に時々練習することもあったようです。相撲協会が、一時、天龍が多数を引き連れ脱退。協会も大変な時期でしたが、その解決に一役買ったとのことです。玉錦を後援し、横綱昇進の際は横綱太刀持ち、露払い、三枚の化粧廻しを贈り花に添えております。
一緒にチャンコ鍋をつついて励ましたり、玉錦はとても気持ちの良い人で、身内のようにしておりました。

 と、語っている。
 裾に山口登の名前が入った揃いの化粧廻しを着けた、露払い、太刀持ちを従え白綿で力強く縒りあげた横綱を締めて華麗に土俵入りする玉錦を、山口登は砂かぶりから見上げて感慨一入だった。
 ゆったりと四股を踏み、力強い寄り身を見せる玉錦の晴れ姿から、思い出すのは、徳島刑務所に服役する鬼頭良之助の風貌である。入門当時は百六十五センチ五十七キロという小兵の玉錦は、生傷がたえないほどの稽古熱心でボロ錦といわれた時期もある。しかし、努力の結果、横綱になるまでの勝率は七割五分という強さで三度の優勝をはたしている。
―小父さん、錦はとうとう相撲の頂点に立ったぜ。
と、心の中で登は語りかける。
―登さん、おおきにぜよ。
と、玉錦横綱昇進を知れば、鬼頭はわがことのように喜んでくれるだろう。」


・・・という、侠客が、ある意味健全にも機能していた時代、があったということか。この逸話は千九百三十年代という時代である。
春秋園事件によって繰り上げで運よく新入幕できた弱い双葉山が、のちに化けて玉錦を凌駕し、六十九連勝をしたという事実。玉錦は三連続優勝したのに品格や素行の問題もあってなかなか横綱になれなかった(上記のようにそのあと横綱に昇進)とか、現役中盲腸をこじらしてあっけなく急逝してしまった(引退してしまった)、双葉山玉錦にすごくかわいがってもらっていたが見事恩返しをして以降は玉錦は殆ど双葉山に勝てなくなってしまった、など、なんだか朝青龍白鵬をそれぞれ玉錦双葉山になぞらえたくなってしまう。ちなみに朝青龍は高知・明徳義塾高校出身、玉錦高知県出身。なんとなくネガとポジっぽい。
・ちなみに山口組が全国的組織になったのは三代目の時代であり、それ以前は「神戸の小さな博徒一家に過ぎなかった」らしい。(『三代目山口組 ―田岡一雄ノート』より



もうひとつ抜粋。猪野健治『やくざ親分伝』より

「親分の肉親や親戚、親分と事業上の取引関係がある者は「周辺者」とされ、警察の監視の対象となる。こうなるともはや人権問題である。人権問題と闘うのはマスコミの使命のはずだが、マスコミはやくざだけはその対象からはずしている。「アウトローのやくざが人権を云々するのはおかしい」という論理である。人権に例外があってはならないのだが、やくざに関しては異をとなえる者は数少ない。その数少ない一人の弁護士は、刑事から「先生はなぜ暴力団を擁護するのか」と罵声をあびせかけられたという。これは法治国家として由々しい問題である。
 少なくとも報道する側には、もっと柔軟に多様な角度から、対象を取材する姿勢があってしかるべきだろう。」


・・・八百長問題での携帯電話提出問題。ここまで警察がエスカレートして越権いるのにマスコミも世間も殆どこのことを追及しないのは、やはり相撲とり(実際に関わっていない力士がいたとしても、関わった人の周辺にはなる)は暴力団と関係あるから人権云々する資格がないからなんだろうか。