3月12日、東京都杉並区、東日本大地震、ototo詩



・朝、起きても、地震の全貌がよくわかっていない。テレビはずっと震災のニュースばかり、ネットもすべて震災のニュースが続く。兎に角津波の被害が激しいと云うことは解る。非常に気が滅入るのだが、やはり観なくてはと思い、ニュースを消すことが出来ない。ガスが通じる。携帯電話(同士)は相変わらず殆ど通じない。



・土曜日の仕事、日曜日の仕事はなし。


・余りに繰り返しニュースを観てしまうので、鬱状態になってしまうと思い、休みの日にいつもするように、午後、ささま書店ブックオフに行ってみる。何事もなかったかのように、両方ともあいており、お客さんもそれなりに入っている。相変わらずささま書店の有名な百円コーナーにはマニアが溜まっている。ささま書店で何冊か購入。そのあと、震災がおこった時に居たベローチェに再び入り、読書。すべてが日常に恢復してきつつあるのかなと云う一瞬少し明るい兆しを感じる。



・午後いったん家に帰り、またテレビを点ける。だいぶ地震の詳細映像がたくさん送られてきているようだ。地獄絵図は、気仙沼の火事被害だけではないようだ。だんだんと、津波がひいた後のリアルな映像が配信されてくる。刻々と、気が滅入る。福島第一発電のニュースがだんだん大きく取り上げられてくる。放射能漏れの心配。なにやっているんだと心配の声、そこに、水素爆発。なんと建物一棟が吹き飛ばされてしまったというではないか。連鎖反応なのか、新たな被害が出てくるようだ。節電、停電の呼びかけや情報が飛び交う。もうコンビニには単1、単2の乾電池がなくなっている。おにぎりなどの食料品も、ない。この状態では、スーパーにも何もないだろう。とりあえず停電になる前に、お米を炊いておこうとおもって、三合半炊く。




・そんな中、ototo詩はやると云う連絡が来る。テレビでもtwitterでもmixiでも、自粛ムードのなか、決行すると云う。黒川直樹君のブログでその決意をみる。なみなみならぬ決意を感じて、これはどんなことがあっても行かなければと思う。
地震の時楽しくするのは不謹慎だとか、イベントで電気を浪費するな」と云った一見正義あふれる高尚な御意見も、冷静に考えれば、「悲愴な感じにすればするほど暗くなって精神衛生がどんどん悪化してしまいかねないし、大勢が少しの光の中で一か所に集まったほうが節電になるではないか」といったような内容の、ototo詩を主催する黒川直樹君や井上泰信君たちの意見に分があるのは間違いないだろう。
全然やましいことではない。ただ、そもそも交通状態もかなり混乱しており、お客さんが集まるのだろうか。
僕も、何だか地震でまだペースを掴めておらず、どこかぼんやりしたりしているのだ。態勢が整っていないのに、観客ではなく表現者として、朗読なんてなれない行為をしても、人はよろこぶのだろうかと正直ちょっと不安にもなった。


・とりあえずテレビを消して、外に出てみる事にする。外は、非常に澄んだ夕焼けである。夕日が眩しい。街は正常通りである。青空だ。ただ、青空の中の雲には、やはり、地震雲らしき放射線状の羊雲などが僅かだが出ているように感じられる。その地震雲らしきものを写真に撮る。
ototo詩の会場のbarに行くと、黒川君がおり、そのうち泰信君が来る。みんないつも通りである。しかしbarに備え付けられたテレビでは、刻々と深刻さを増していく原発の姿が流されている。僕は、朗読とともに流すCDを忘れた。自転車で家まで戻り、そこからまたbarに戻る。


・戻ると、もう朗読会は始まっており、ちょうど主催の黒川君が朗読しているところであった。主催した井上君と黒川君の朗読が終わった後、いよいよゲストの朗読である。僕はゲストとして一番最初に読んでくれと云われ、正直うろたえたが、まあ、しかたあるまいと思いはらをくくって、自分の文章を朗読。

・二千字ちょっとの、自分自身が書いた文章を、朗読する。たったそれだけなのだが、いざ、ステージに立ち、読んでみると、びっくりするくらい緊張してきて声が上ずる。息遣いが荒くなる。肺に空気が入らない。唾を呑みこむ。
もうこれはいかんと思って、一文一文ゆっくりと、文節をくぎって、あわてず、しっかりと声を出す。やっと後半になって、少しなめらかになってきた、と云うところで終わった。
しかし長かった、二千字。自分の文章なのに、何を喋っているのだか全くわからない。必死に目で追った活字を声で絞りだすという作業であった。


・終わってからみんなの感想を訊くと、やはり緊張がびんびん伝わってきたそうである。併しそんなに不快には思わなかったらしく、僕が醸し出す朴訥な雰囲気がいいらしい。ただ、よく世間知らずだの朴訥だのに、無条件に思われ、ちょっと見下されやすい(傾向にあると感じる)のは日頃非常に遺憾に思っていたので、なかなか複雑である。ただ、今回の朗読に限っては本当に馴れてない初心者であるからして仕方ないとは思う。あがいても仕方ないので、肯定的にその評を受け入れることにしてみる。

・朗読のあとに、黒川君と井上君と三人で鼎談する。こちらのほうは、ずっと講師をやっているのもあって、全然緊張することもなく普段通りに喋ることができた。どうせならば、朗読と鼎談を逆にしてくれれば、もう少しリラックスして喋れたろうに。なかなか二人はいじわるである。




・その後、ototo詩は順調に進行していき、なによりも驚いたのはお客さんが非常にたくさん来たことだった。正直、僕以外の他のゲストは来ず、四五人だけで飲んで終わりなのかなあと思っていたのだが、ゲストの人たちは三人来たし、お客さんが椅子に座りきれない程だったのには吃驚である。やっぱりこの会を開催してよかったんだ、正解だったんだ、と実感をする。他のゲストの朗読を聴きながら、oaと話しながら、とてもいい時であった。





・ototo詩が終わった後、高円寺の飲み屋、そして井上君の家に行き、また徹夜のみを敢行する。相変わらず熱い井上君を中心に、こないだとはまた違った楽しい話が繰り拡げられた。




・朝八時過ぎてからお開き。大変酔って居り、家に帰るのがやっと。